梅雨の時期は、機材の整備ということで、極軸のセッティングの精度と検証方法について
書きます。
極軸を合わせることは、天体写真を撮影するためには非常に重要です。これが、正確でないと
星を正確に追尾することが、できません。
日本では、極軸を合わせるのは、赤道儀に付いている極軸望遠鏡を使うことが、普通ですが、
以外にこの極軸望遠鏡を使った極軸を合わせる方法は、ユーザーが、考えているよりも精度が
悪いということをご存知でしょうか?
最近では、極軸合わせを支援するソフトが、PCやタブレット、スマホでありますが、これらも
赤道儀を設置する場所の正確な緯度、経度を測地して入力して使わないと正確に極軸を合わせる
ことができません。
正確な緯度、経度を入力して極軸合わせを支援するソフトを使ったとしても、人の目で、極軸
望遠鏡を覗き込む場合、極軸望遠鏡の光軸と視線の光軸が、一致するとはかぎりません。
私の経験上、極軸望遠鏡を覗くときに微妙な目の動きで、北極星の位置が、変化することを確認
しています。ですので、それほど極軸望遠鏡を使った極軸合わせは、精度が、よくないという
ことです。
最近の海外の赤道儀では、極軸望遠鏡は、オプションで、付いておらず基本的には極軸望遠鏡で、
極軸合わせることはしません。では、どうするかというと、自動導入モータードライブの機能と
GPSを利用して、見えている星で、アライメントを行いドリフト法で、極軸を合わせます。
この方法は、見えている星の位置で、極軸を合わせるので、かなり正確に極軸を合わせることが
できます。EM-200クラス以上クラスの海外の赤道儀では、この方法が、主流で、コンピュータ化
されており日本のメーカーの赤道儀の極軸望遠鏡至上主義というのはすでに時代遅れです。
日本では、Sky-WatcherのEQシリーズが、この機能を持っています。
さて、話を戻しまして、最近の天体写真の撮影では、オートガイダーを使うことが、普通で、ある
程度の極軸の誤差ならば、オートガイドで修正できる範囲でしょうが、これは、極軸望遠鏡や
赤道儀の極軸に偏心が、無いことが、前提になりますが、最近の赤道儀は、タカハシのEM-200や
EM-400でも新品で、極軸望遠鏡が、偏心している物が、あるので、信用できません。ましてや
最近の中国製となるともっとです。
それでは、極軸を合わせたときに、それが、どれだけ正確かを知る方法は、ドリフト法を使うと
簡単に分かります。ドリフト法は、赤道儀に極軸望遠鏡が、付いていない時代に星の動きを使って
極軸を合わせるのに使った方法です。昔は、十字線を張ったアイピースを使って眼視で、行っていま
したが、最近では、デジタルカメラを使うと、簡単にできます。
「極軸 ドリフト法」で検索すると詳しく解説したサイトが見つかります。
NGCさんのサイトは、かなり詳しく解説されています。
以下に私が、行っている極軸の検証方法を書きます。
極軸を合わせた後に望遠鏡を子午線付近に向けます。そして、恒星時駆動で、5秒間ノータッチ
ガイドで、露出したあと微動モードで、50秒間西向きに動かして、今度は、50秒間東向きに
動かします。これで、極軸が、合っていない場合、Fig1のように星の軌跡は、Vの字になります。
極軸が合っていれば、Fig2のように一直線になります。
もし、ここで、Fig1のように星の軌跡が、Vの字になっていた場合、赤道儀の東西の調整ネジを
使って、星の軌跡が、Fig2のように一直線になるように調整します。
次に、望遠鏡を東または、西向きに大きく動かして、先ほどと同じように5秒間ノータッチガイドで、
露出したあと微動モードで、50秒間西向きに動かして、50秒間東向きに動かします。
ここでも極軸が、合っていない場合、Fig1のように星の軌跡は、Vの字になり、極軸が合っていれば、
Fig2のように一直線になります。
こちらでもFig1のように星の軌跡が、Vの字になっていた場合、赤道儀の南北の調整ネジを使って
星の軌跡が、Fig2のように一直線になるように調整します。
これで、かなり正確に極軸を合わせることが、できますし、自宅などで、北極星が見えない場所でも
極軸を合わせることが、できるので、身に付けておいて損の無い手法です。
また、最近では、オートガイドソフトのPHD2には、ドリフト法の機能が、あるので、こちらを
使うというのもよいかもしれません。「phd2 ドリフト法」詳しく解説したサイトが、見つかります。
ドリフト法は、古い極軸合わせの方法ですが、デジタルカメラを使えば、簡単に行えて極軸合わせの
追い込みや検証に使えるので、大いに活用してください。
ことにガイド精度が、悪い場合は、この方法で、検証してみることをお勧めします。
スポンサーサイト
遅くなりましたが、5月31日に梅雨入り前の最後の遠征で、会長と2人で、高野辻ヘリポートに
行ってきました。当日は、黄砂の影響で、空は、良くなかったのですが、標高1000mまで
上がれば何とかまるかもということで、ダメもとで、出撃しました。
結果は、出撃して、正解でした。やはり、標高1000mまで上がると黄砂のひどい層を貫けた
ようで、最高の空とはなりませんでしたが、下界の空からすると最高の空でした。
この日は、黄砂の影響で、透明度は、イマイチでしたが、シンチレーションは、最高でした。
会長の口径45cmドブソニアン望遠鏡で、いろいろ観望しましたが、透明度は、良くなかったので、
淡い系の散光星雲の見え味は、よくなかったですが、シンチレーションがよかったので、
球状星団の見え方は、球状星団の中の微光星まで分解して見ることができて、何年かに一度の
見え方でした。
撮影したのは、M16です。出かけるのが遅く、現地に着いたのが、午後9時を過ぎていたので
撮影を始めた時間も遅かったのもありますが、この時期は、夏至が近いので、夜が、短いので
撮影時間も限られるので、予定していた枚数の画像を撮影することが、できませんでした。
この日も午前3時13分には、薄明が始まりました。
また、この日の下界の透明度からするとかなり良かったのですが、黄砂の影響は、無くなら
ないので、画像処理をしても淡い部分が、思うように出ていません。
M16
撮影日:2014年6月1日
撮影地:奈良県高野辻ヘリポート
露出時間:L 10×11分 RGB 4×5分
望遠鏡:FSQ-106N
カメラ:QSI540 WSG
冷却温度:-15℃
フィルター:Baader Planetarium LRGBフィルター
ガイドカメラ:SSAG
赤道儀 :EM-10 MTS-3SDI+ 改造
さて、次回は、梅雨明け後の7月の終わりになりますが、それまでちょっとお休みですね。