極軸合わせの精度とオートガイドの精度は、別物です。

前回、手持ちの物で、極軸を正確に合わせる方法を書きましたが、最近ではPHD2に
よるドリフト法や、ポーラーアライメントの他に極軸合わせををコンピューターで、
支援してくれるPole Masterの登場で、移動での撮影でも極軸をかなり正確に合わせる
ことが、できるようになりました。
しかし、いくら極軸を正確に合わせてもオートガイド時のガイドの精度は、別という
ことが、あまり知られていないように思われます。

ガイド鏡の焦点距離が、300mm以下と短い場合は、分かりませんが、オフアキシスや、
焦点距離の長いガイド鏡を使ってのガイドでは、私の経験上、極軸合わせの精度は、
あるレベルを超えると、いくら追い込んでもオートガイド精度は、上がりません。
ここから先は、赤道儀の機械的な精度、つまり赤道儀の組み立て精度やウォーム
ギアのすり合わせ、ギアのかみ合わせなどが、大きく影響します。これは、赤道儀も
工業製品で、機械である以上避けられないところです。

また、追尾使われているステッピングモーターの基本ステップの荒さも影響します。
極軸を正確に合わせると赤緯側は、ほとんど修正が、入らなくなりますが、赤経側は
ガイド星を追尾するために常に動いています。このとき、赤道儀に使われている
ステッピングモーターの基本ステップの差が、出てきます。
例えば、1ステップ7.5°のステッピングモーターを使用した場合、360°回転する
のに48ステップになります。これをマイクロステップで、1ステップを細かく分割
すればモーターの回転は、滑らかになりますが、360°回転する基本ステップ数は、
変化しません。なので、ステッピングモーターを1ステップ1.8°で、360°回転する
のに200ステップするモーターと比べるとガイドは、荒くなります。

私は、EM-200Temma2、EM-10 AGS-1X改造(最近は、MTS-3SDI+を使用)、GP赤道儀を
所有していますが、それぞれに使われてるステッピングモーターは、EM-200Temma2が、
1ステップ1.8°のHB型、EM-10 AGS-1X改造が、1ステップ15°のPM型、GP赤道儀が、
1ステップ7.5°のPM型が使われています。また、マイクロステップの分割数は、
EM-200Temma2が、1ステップ16分割、EM-10とGP赤道儀が、コントローラーがMTS-3SDI+
なので、1ステップ64分割になります。それぞれ使用しているステッピングモーターが
HB型とPM型と性格が、異なりますが、これで、極軸を正確に合わせたときのガイド精度の
順番は、基本ステップが、小さい順に

  EM-200Temma2 < GP赤道儀 MTS-3SDI+仕様 < EM-10 MTS-3SDI+仕様

なります。
焦点距離が、1000mmを超える望遠鏡をQSIのカメラのオフアキシスでガイドできるのは
EM-200Temma2だけになりますが、私が、撮影に使用しているFSQ-106Nフローライト鏡筒や
FSQ-85EDの短焦点屈折では、EM-10 AGS-1X改造でも十分オフアキシスでガイド可能です。

天体写真の撮影で、極軸を正確に合わせることは、ガイドの精度を良くするために必要
不可欠ですが、極軸の精度が、あるレベルを超えると赤道儀や使われているモーターの
精度が、影響するということです。ただ、撮影に使う鏡筒やレンズが、1000mm位ならば
撮像素子のピクセルサイズにも寄りますが、十分誤差内と考えてよいでしょう。

あと、日本は、偏西風の下にあり、シーイングが、海外に比べると悪いので焦点距離が、
1500mmを超える望遠鏡で、オフアキシスや、焦点距離の長いガイド鏡で、ガイドする場合、
モータードライブによるガイドでは、修正のレスポンスが、星像のゆらぎに追いつけ
ないので、AOガイダーを使わないと十分な精度のガイドできないと考えた方が、よい
でしょうね。

私は、中学生の頃から30年以上天文と天体写真を趣味としてきて、思うのですが、昔、
オートガイドなど無かった時代、モータードライブは、あっても眼視で、ガイドして
いた頃は、ガイドの精度は、赤道儀の機械精度に寄るところが、大きかったのです。
ST-4などのオートガイダーの登場で、極軸を合わせれば、後はオートガイダーまかせで、
十分ガイド出来ていまう時代が、来ました。そして、今度は、技術の進歩で、極軸を
誤差の範囲まで、簡単に追い込めるようになって、また、赤道儀の機械精度が、問わ
れる時代が来たように思われます。
しかし、今回は、赤道儀の機械精度でも、ここまで来ると精密加工精度と言った方が、
よいでしょうね。

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[ 2016/03/13 05:50 ] 機材 | TB(0) | CM(5)

手持ちの物で、極軸を正確に合わせる方法

今年は、年明けから天気が悪いので、未だに撮影できていません。
という訳ではないですが、極軸を追い込む方法を紹介します。

日本では、極軸合わせは、赤道儀付属の極軸望遠鏡で行いますが、極軸望遠鏡の
レチクルの精度や極軸望遠鏡の偏心などで、極軸合わせで、十分な精度出ない
などで、極軸を正確に合わせるためや補正したりするために最近ではPoleMaster
が、販売されていますが、結構高価です。

ですが、少し考えれば、手持ちの物で、極軸を正確に合わせる方法は、あります。

極軸を合わせるとは、赤道儀の回転軸を地球の地軸と平行にすることです。
つまり赤道儀の赤経軸をできるだけ地球の地軸と平行にできればよいわけです。
要するに赤道儀を設置した場所で、誤差範囲で、正確な日周運動の中心を割り出して
赤道儀の赤経軸をそこに持ってゆけばよいわけです。

用意するもの
・自動導入機能のある赤道儀、モータードライブ、または、PCと接続可能な
 スーパーナビゲーターなどの導入支援装置。
・自動導入機能のある星図ソフト Cartes du Cielやステラナビ
・GPS

GPSは、GarminのハンディーGPSや秋月電子通商で販売されているGPSデータロガーなど
GPSを使って緯度・経度を測定できるもの。
GPSデータロガー
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-09272/

GPS機能のあるスマホやタブレットでは以下のようなアプリをを使って緯度・経度を測定を行います。
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.gpscoordinatesandlocation&hl=ja


手順
1、赤道儀を設置するときに水準器を使って、赤道儀の水平を出します。

2、極軸望遠鏡で、極軸を合わせます。

3、撮影場所の緯度・経度をGPSで、測定します。このときGPSの時計で、自動導入に
  使うPCの時刻も合わせておきます。

4、星図ソフトの観測場所の設定で、GPSで測定したデータを入力して、現在時刻の
  星空を表示させます。

5、東の空にある1等星を望遠鏡の視野の中心に入れて、星図ソフトでアライメントを
  行います。
  続いて、自動導入で、西にある分かりやすい恒星(できれば1等星)を導入します。
  導入後、導入した恒星が、視野の中心に来るように赤道儀の水平と垂直の微動で
  調整します。導入した恒星が、視野の中心に来たところで、アライメントを行います。
  同じ手順で、全天の1/3程度の範囲で、北、東、南の順に見えている恒星を利用して
  3点から6点で、調整とアライメントを繰り返して極軸を追い込みます。

この方法で、かなりのところ極軸を追い込むことができます。しかし、極軸合わせの
精度とオートガイドの精度は、別物です。
PHD2やMaxIm DLなどで、ガイドのグラフの赤緯(Dec)のグラフが、ほとんど変化しない
状態であれば、十分な精度で、極軸が、合っていりと判断できます。
手持ちの機材で、できるので、どうでしょうか?

赤道儀の極軸の追い込みや確認は、PHD2のドリフト機能でもできます。
PoleMasterを購入すのもよいですが、手持ちの機材で、同じことができなか、まずは
考えてみてください。
[ 2016/03/06 18:09 ] 機材 | TB(0) | CM(6)