今年の星もとの会場で、久しぶりにいろいろな方とお話できて感じたことを
長々と書きますが、先に結論を書いておくと、恐らくこの先日本の天文
メーカーの未来は、薄いというこです。
個人的には、すでにタカハシやビクセンが、ナンバー1という時代は、アフター
サービスを含めて終わったと思います。
今年の星もとの会場で、ZWOのAM5赤道儀を分解されて中身を見せてもらいましたが、
駆動部分も制御している電子回路も基板もすでに日本メーカーの製品よりも
良いものを作っていて、すでに日本メーカーでは作れないレベルになって
いました。
AM5赤道儀を分解、解析された方も言われていましたが、3年位前までは、
作りも甘く、まだ、日本メーカーの方が、良かったけれども、ここ最近では
天文関係の電子機器は、中国メーカーの方が、レベルが、上になったと言われて
いましたが、私もまったくそう思いました。
それと日本の天文ユーザー、ことの天体写真を主にやっている方が、欧米の
一流トップメーカーであるアメリカのAstro-Physics、Software Bisque
イタリアの10 Micron、ドイツのAPM - LZOS(旧TMB)などを知らないことです。
日本には、欧米の一流トップメーカーの製品が、個人輸入以外では、入って
おらず、その性能を知らないというのは、問題だと思いました。
欧米のトップメーカーと日本メーカーの製品の比較が、できないのは、
日本メーカーが、どれくらいのレベルにあるのか知るうえで、大きいです。
”井の中の蛙大海を知らず”では、発展はないです。
望遠鏡に関しては、中華メーカーのAskar、SHARPSTAR 台湾メーカーの
William Opticsの望遠鏡を見れば、ネット上のユーザーさんの作品などから
性能的にはタカハシやビクセンの望遠鏡と同等か上回っているものもあります。
そして、何より日本のメーカーよりもデザインが、良いし、作りも良い、
William Opticsに至っては、色まで選べるのは、ユーザーに選択肢が、増えて
面白と思います。
望遠鏡の製造でも中華メーカーだけでなく欧米のメーカーでは、部品の設計と
製造は、最新の3DCADを使い、そのデータをコンピューター制御の工作機械に
送りって、加工するのが、主流になっているに、日本では、未だに職人頼み。
職人技が、悪いわけでは、ありませんが、大量生産で、均一の精度は、難しいです。
機械工作に詳しい人に聞くと、今のコンピューター制御の工作機械ならば
1/1000程度の精度ならば機械加工で、十分加工できるとのことなので、
海外メーカーは、日本のメーカーのように熟練職人に頼った物作りされていません。
また、望遠鏡の光軸調整なども最新の計測機器を使って、調整されていて、
こちらも熟練職人頼みではないので、できる数もばらつきも人頼みの比では
ないです。
赤道儀などの電子機器とソフトに関しては、もう日本メーカーは、中華
メーカーの足元にも及ばない状況になっています。
例えばZWOのASIAIRは、自社製品しか使えない物ですが、中身は、ハードは
Raspberry Piで、専用のアンドロイドアプリからカメラの制御からオート
ガイド、極軸合わせなどができるという発想は、日本のメーカーには、
無いものです。
5、6年前、星もとで、ビクセンの人が、”STAR BOOK TENは、オールインワンで、
これ1台で、自動導入できます。”と自賛されていましたが、その時、私は、
自動導入のモータードライブにWifiなりBluetoothの無線通信機能を付ければ
スマホやタブレットにSkySafariをインストールすればこれらから自動導入できて、
操作も画面をタッチするだけで簡単できるし、彗星や小惑星の最新データも
ダウンロードできて、とても使い勝手が、良いと話しましたが、STAR BOOK
TENのオールインワンを強調されるだけで、聞く耳を持っておられませんでした。
このころすでに海外メーカーは、無線通信で、自動導入を行う機能を付けて
いましたが、このことを日本メーカーの人に話をしても見向きもされません
でした。
では、なぜ、このような状況に日本メーカーが、なったかは、これは、
日本人に共通したことですが、英語が、できないということ。
私は、大学、大学院時代(約30年前)にどちらの指導教官の先生から
インターネットの情報通信技術が、発達すればサイエンスやテクノロジーの
情報発信元のほとんどは、英語圏なので、英語が、できなければ何も
できなくなると言われていたことを記憶しています。事実、現在、そう
なっています。
こう書くと、翻訳ソフトが、あるではないかと言われるかも知れませんが、
翻訳ソフトは、どこまで行っても翻訳ソフトであってサイエンスやテクノ
ロジーの英文を翻訳できませんし、英語の知識が、なければ英語は、理解
できません。
中華メーカーが、強いのは、彼らが、英語でのコミュニケーションになんの
問題もないからです。
インターネットが発達した現在では、サイエンスやテクノロジーの世界では、
英語が、できなければ最新の技術情報を得ることも、議論に参加することも
できません。日本語に翻訳された時には、もうすでに時代遅れなのです。
日本では、理科系の大学を卒業していても英語が、できないが、当たり前
ですが、日本以外では、理科系の大学だけでなく大学を卒業していれば
英語が、できるは当然なのです。
これは、低迷する日本の根幹と認識すべきです。
コロナ前は、大阪の難波や日本橋界隈で、中国人、韓国人、東南アジア系の
人み道を聞かれても全て英語で、質問されて来ましたから。
私も仕事で、電子機器の開発をしていますが、マイコンなどの電子部品の
多くは、海外メーカー製で、データシートやマニュアルは、英語ですし、
ネット上の技術情報も英語で、議論されているものが、ほとんどです。
天文でも使っているソフトは、すべて海外製のもので、情報源の多くが、
海外のサイトで、英語です。
次にメーカーに大学や大学院で、光学、電子工学、ソフトウェア工学を
修めたエンジニアが、おらずハードやソフトをほとんど自社開発できない
ことでしょう。
日本では、自社で、エンジニアを育成することが、多いですが、これでは、
大学や大学院で、専門教育、研究を受けてきた人のは、追いつけません。
そして、日本には軍需産業や軍事技術が、ほとんど無いことです。
こう言うのも天文の機材は、今では電子光学機器であり、最先端技術を
使わないと作れない製品になっているからです。
中国メーカーなどは、自社製品の開発、製造に軍事予算や軍事技術が、
入っています。これは、中国メーカーだけでなく海外のメーカーの製品は、
レンズや鏡の研磨、コンピューター制御の工作機械、光学計測機器、ソフト
ウェアに軍事技術が、転用されています。
日本には、軍事技術を民生用に転用することが、あまりありませんが、
軍事技術は、天体望遠鏡や、天文電子機器の開発には、今では、不可欠な
技術で、日本の天文メーカーには、これがありません。
長々と、いろいろ書きましたが、天体望遠鏡や天文電子機器の開発、製造が、
海外では、最先端技術が、導入されて、コンピューター化されているのに対して
日本が、これらに対応できず、時代遅れになってしまっていることです。
今後これは、悲しいですが、広がることは、あっても縮まることは、無いと
私は考えています。
もしかすると、日本の天文メーカーの終わりの始まりを見ているかもしれません。
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[ 2022/10/02 16:30 ]
機材 |
TB(-) |
CM(6)
記事を興味深く読ませていただきました。
恥ずかしながら、TMB以外の欧米メーカーを知らなかったです。
中国系メーカーについては、製品の品質向上は目覚ましく、自分が最近、新品で買った製品は中国系メーカーばかりです(中古は別)。
ピント微動装置も付いていて、カメラマウントだけ買えば即撮影可能で、値段は日本メーカーの同クラスの1/2-2/3程度(最近は円安でそこまでではないですが)。
もっと普及してもよいと思いますが、ユーザー側にも問題があって、
試してもいないのに「中国製品がいいわけがない、高橋が負けるわけがない」
という頭の固い方々がいます。
こんな方々に日本製品以外を売り込むのは難しいと思われます。
日本メーカーの利点は、マニュアルが日本語で充実しているのと、ユーザーが多いのでネットで情報が得られやすいくらいかと感じています(英語のできない理系大卒ゆえ)。
もっとも一番の問題は、天文を趣味とする日本人の高齢化と人口減少かと。
他国の状況はどうなのでしょうかね。
はじめまして!
とても的を得た興味深い記事でした。
もう完全に日本は敗北してますね。確かに英語は必須だと思いますが言われ続けて何年経つのか?
英語、プログラミング、3DCADが出来ますが、製品化するノウハウとタブレット上で動くアプリの開発知識がないのが辛いところです。ただ情報を公開すると海外の人から沢山問い合わせが来ますが、日本人からは内容についての質問はゼロです。ネットで分からないことを調べてもほとんど海外サイトですからね。
軍事転用の可能性も開発に弾みをつけているのは間違いないと思います。その点でも日本の敗北は決定的です。
いろいろ書きたい衝動に駆られましたが長くなりそうなので。
また寄らせていただきます。
せろおさん、コメントありがとうございます。
欧米のメーカーは、他にもありますからね。
中国系メーカーは、ここ3、4年の進化は、望遠鏡、電子機器共に
激しくて、急速に日本を追い抜いたと思います。
私もWilliam OpticsのRedCat51を持っていますが、デザイン、
機能、光学性能どれも日本のメーカーでは、マネが、できない
レベルですね。
マニュアルも最近は、動画が、用意されていたりして、あまり
言語を意識しなくてもよいようになってきていますね。
これは、どこの国も同じだと思いますが、紙に文字と図で、
説明するよりやっているところを見せるほうが、分かりやすい
のでしょね。
天文人口については、高齢化で、減少しています。しかし、
観望会などを行うと、興味のある人は、潜在的に多いので、
増やせると思いますが、主に天体写真をやられている人、科学と
しての天文よりも写真の対象としか見ていないところが、あるので
ここが、一般の人と違うところだと思います。
KENさん、コメントありがとうございます。
英語については、ネットの世界は、基本文字ベースなので、聞いて、
話すことよりもまず読めることが、大切だと思っています。
天文の機器もハードよりもそれを動かすソフトが、いかに良いものが
作れるかなので、ソフト開発の知識は、不可欠ですね。
天文関係の機器の情報を公開すると日本よりも海外からの問い合わせが
多いというのは、私も実感します。
これは、日本の天文ユーザーで、物作りをする人が、ほとんどいないから
だと思いますね。
軍事技術の転用というのは、あまり見えにくいと思いますが、私達が、
日常で、使用している物でも最新の戦闘機や戦車の部品を作っている
コンピュータ制御の工作機械が、使われているので、精密加工で、
これらのノウハウを使わないことは、今の工業製品のレベルにないとい
ことになると思いますね。
これは日本での需要が少ない故の会社の資金力が違うので仕方ないですね。
マイナーな趣味ですし、高価なのでちょっと買ってみよう
なんて余裕は無くて中年以降に余裕が出来てやっと夢の機材が買えたみたいな。
工作機械である程度の精度は出ますが、バラツキが出るのが現状です。
なので数ロットごとに測定しています。素材の熱膨張や刃物の消耗によるものです。そこを人型ロボットがが監視して調整してくれると良いですね。
機械が高精度であっても、それを扱う人の技術が不要になることは
有りません。また高精度を要求される物の最終的な調整は人の手によるものは
現段階では、今も変わりません。
なので、中国製量産型のそこそこ良くて比較的安価なの物を求めるか、それ以上を求めるかですね。タカハシなどは良いものを安定して作りたいがために無理して量産しないのだろうと思っています。また海外でもトップクラスの定評があるのが物語っています。入荷が1年待ちとかなっていますが、それでもいいから欲しい人が
国内外に多くいますし。
外国製品はサポートがスムーズに行かないので
日本人は敬遠するのだと思います。
私は自分で交渉して自分で修理するので良いのですが
多くは、そうでない人なので仕方ないですね。
金子さん、コメントありがとうございます。
今の中華メーカーの望遠鏡は、正直、日本製を超えている機種も
あります。もう、”お金が、できたらタカハシの望遠鏡”は、
古いと思います。
タカハシは、元は、鋳物屋で、鋳物加工を得意としています。
鋳物加工を否定するものはありませんが、海外の製品と競争
するのであれば、砂の型に溶けた金属を流して金属部品を
作っていたのではコスト等で、太刀打ちできないと考えます。
どこかの時点で、機械加工へと移行しなければならなかった
のではと考えます。
もし、タカハシが、望遠鏡にこだわるのであれば、年間の
生産数を少数にして、納期未定で、熟練の職人が、最高の
技術で、丹精を込めて作って、価格も1本100万円越えと
したほうが、生き残れると思います。
外国製品のサポートが、スムースでないというのは、これは、
英語が、できないからですよね。
メーカーに直接メールで、連絡すれば、今は、すぐに回答が、
帰ってきて、的確に指示してくれます。
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